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巻第五 「憑依」
「鬼封じに二度目はないんだよぉ。お前に憑依して鬼にしてやる。」
「え?」
「俊輔!逃げるぞ!!」
あっけにとられている俊輔を引っ張り、逃げようとする一磋。
「でっ・・・でもアイツをなんとかしなきゃ」
俊輔はそれでも逃げようとしない
「なにいってんだよ!鬼の魂は人にとりつくまで消えないんだよ!」
「自分が鬼になりたくなきゃあ逃げるしかねーだろ!!」
そういって一磋は力ずくで連れだした。
「待てよ一磋!!何か方法があるはずだよ!!」
「ないよ!!」
そういって俊輔と一磋は川の中を走った。
しかし俊輔は苔の生えた川底の石に足を滑らせ、転んでしまった。
「うわぁぁ」
「何してんの!!早く・・・・・・!」
転んでもがいている内にも鬼の魂はどんどんせまってくる。
「体の中にとりついてやる!」
そういって鬼の魂が俊輔の目の前まで来た瞬間
何かが鬼の魂に体当たりしてきた。
俊輔の犬、「虎丸」である。
見る見るうちに鬼の魂は虎丸のくちの中に入り、とりついていく
そして鬼の魂が全て虎丸の中に入り、虎丸は気絶し、倒れてしまった。
「なんだ?犬にとりつきやがったぞ」
「と・・・虎丸が俺の身代わりに?」
俊輔は呆然として倒れた虎丸を見ている。
「今だ。殺そう」
そういって一磋は短刀を構える
「なっ・・・何いってんだよ!?」
「この犬が下手鬼の内に殺すんだよ。大鬼になってからじゃ遅いんだ!」
「やめろ!!」
俊輔は殺させまいとして虎丸の前に立ちはだかる。
「おい!ただの犬だぞ!!今殺さないと・・・」
「虎丸はただの犬じゃない!!虎丸は俺と・・・俺と・・・」
そういいかけた時に虎丸が目を開け、空高くジャンプして俊輔達から遠ざかった。
そして河原に着地した。
「虎丸!大丈夫か!?」
俊輔は尋ねるが、虎丸の異常な様子にとまどう。
虎丸は、俊輔に牙をむき、見る見るうちに体の形を変えていく。
大鬼になろうとして、身体が変化しているのだ。
「ウォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
虎丸はものすごい声でほえた
「くそっ!」
一磋は舌打ちしながらまた刀を構える。
俊輔はただただ呆然としているだけだった。
そしてもう虎丸の体は俊輔達よりも大きくなっていた。
しかし、それでもまだ虎丸の体は変形している。
角が長くなり、キバをむき出しにし、毛が逆立っている。
(虎丸!虎丸!!)
俊輔の頭の中には虎丸と出会ったときの頃の記憶がよぎっていた。
『お前もひとりぼっちなのか?』
『親とはぐれちゃったの?そうか・・・じゃあ俺と同じだね』
『怖がらなくてイイよ・・・俺とお前は・・・友達だ』
そして、俊輔が呆然としているときに、鬼と化した虎丸が飛びかかってきた。
そして俊輔はその場に倒され、押さえつけられる。
「虎丸!!」
俊輔がそう叫んだ瞬間、虎丸の動きが止まり、
一磋は手に持っていたクナイを虎丸めがけて投げつけた
クナイは虎丸の目の近くと頬に命中した。
しかし、虎丸は一磋の方をにらみ、手で一磋をなぎ払った。
一磋は1メートルほど吹っ飛ばされ、手にけがを負って、痛がっていた。
「一磋!!」
「なぜ戦わない俊輔!!」
「だって!!」
「だってじゃない!!お前・・・アイツを殺さなきゃ・・・お前が死ぬんだぞ!!」
「クッ・・・グギ・・・」
その間にも虎丸は変形し続ける。
「どけっ!」
一磋は俊輔を突き飛ばし、飛びかかってくる虎丸を刀で受けとめようとした!
しかし、虎丸はもう一方の手で一磋の頭を川に押しつける。
一磋は息ができなくなり、もがき苦しむ。
そこへやっと俊輔が虎丸に斬りかかる。
不意をつかれ、傷を負った虎丸は、一磋の手を離し、よろけて俊輔から遠ざかった。
「やめるんだよ虎丸!そんなコトしたら一磋が死んじゃうよ・・・」
「虎丸!元に戻ってよ!!じゃないとお前を・・・殺さなくちゃいけなくなるだろ!?」
俊輔は泣きながら叫ぶ。
しかし、そんな思いは鬼となった虎丸には通じない。虎丸はニヤリと笑う
(虎丸!!)
俊輔は、自分の思いが通じないのを痛感する
(なんとしてでも虎丸を止めなくちゃ。ココで逃げても虎丸は・・・)
そして、虎丸はもう最終段階に変形しようとしていた。
「アアアアアアアア!!!」
「俊輔!アイツ大鬼になる!!もうダメだ逃げるぞ!!」
「俺は・・・逃げない」
「バカ!大鬼相手に勝てると思ってんのかよ!?もし倒しても・・・」
「分かってるよ!!」
そう・・・もしも大鬼を倒せたとしても、俊輔が鬼になってしまう。
しかし、俊輔は虎丸をほおってはおけなかった
「分かってる・・・でも誰かが殺らなきゃなくちゃ・・・虎丸を殺さなくちゃいけないんなら・・・」
「お前・・・」
「俺がやる!!」
そして、ついに虎丸は大鬼となった。
<大鬼・「破達羅・改」 白虎丸>
そして、俊輔は刀を構える・・・